勢いだよ☆ラブリージャスティス!


 ぴゅるるるーばびょおおおんんんん!!!!
 やったぁ! やったですぅ! ついに私やったですぅ! さあ、ここで決めるですよ!
「シャキーン! シャキーン! シャキーン!」あっ、私ったらかっこいい手の動きにあわせて声でサウンドエフェクト、通称SEを自分で入れてしまいました! これは反省です。気をとりなおして行くですよ!
「愛と正義の使者! ラブリージャスティスここにあり!!!」
 決まったですぅ! カッチョいいですぅ! でも、皆が私のカッチョいい姿を見られないのが残念ですぅ。
「被害状況の確認急げ!」
「くっ、何がどうなってやがる! いきなり爆発しやがった!」
「首相は無事か!?」
「また爆発が起こるかもしれん! 警戒を厳となせ!」
「首相とSPが乗車した車は大破! 車内の乗員の生存は絶望的です!」
「あああ! くそ、人が邪魔だ! 誰か人払いをしろ! まだ爆発物が仕掛けられてるかもしれないってのに!」
「まて、人払いは駄目だ! テロリストがまだ紛れてるかもしれない!」
「テロだって!?」
「ああ、こんなものテロ以外の何だってんだ!クソ!」
 えへへ☆ いい大人どもが慌てふためいてるですぅ。でも残・念・で・し・た☆ 今の私は奇跡の法衣『恋は盲目』をまとっているから見つけられないのです。いわゆる光学迷彩ですわね。うふふ。でも黒服の人たちの怖い顔を見るのにも飽きてきました。汚らわしいですしね。とゆうわけでそろそろおいとましましょうかしら。ドロン!ですぅ。
「うわぁ! また煙が上がったぞ!」
「今度の爆発には殺傷能力はないぞ! どうなってやがる!」
「おちょくってやがるんだ! クソ!」
 ……

「アキちゃーん、起きなさい。もうお昼よー」
 ふあああ、もうお昼ですかぁ。マミーがうるさいですぅ。まったく、あなたの実子アキちゃんは日本の未来の為に夢のなかで戦ってきたというのに、もう少し寝かせてくれてもいいじゃないですか。え?夢?違う、夢じゃない!だってほら、ポケットの中には使わなかった奇跡の聖玉『正義の鉄槌』通称パイナップル爆弾が一個残っているもの。太ももに食い込んで痛いったらないですわ。
「ちょっと、アキちゃん、聞いてるの?入るわよ?」
 いけない、マミーが私の聖なる子部屋通称子供部屋に入ろうとしてるですぅ!
「っせええなあ! 聞いてるよ! 今起きるから早く下で飯用意して待ってろよ糞ばばああああ!」
 まあ私ったら少し言葉がきちゃなかったかしらん。
「そ、そう……。起きてるならいいのよ。早く降りてらっしゃいね」
 マミーはリビングの方へ階段を降りていったようです。マミーは物分りが良くて大好きですわ。私も早く下に降りて、一緒に少し遅い朝御飯を食べなきゃ。っと、その前に。私ったら昨日あんまりにも疲れたものだから、アキちゃんノートに私の活躍を記録しておくのを忘れて寝てしまったのだわ。マミーには悪いですが、もう少し待っててくださいね☆
 ……私は……、にっくき悪漢どもに……、正義の鉄t……ついってどう書くんでしたっけ。平仮名でいいですわね。鉄ついを下したのでした……っと! 完成! あっ、そうだ。ネットの世界の皆は私の活躍に気がついてくれたかしら。……! ν速に繋がらないじゃないの!(バキッ!)あら、私としたことがマウスを投げてしまいました。でも私、抜かりはありませんわ。予備のマウスはたくさんマミーに買ってもらっているのですぅ。愛と正義の使者には欠かせないものですからね。マウスを繋げているうちにモニターには鯖落ちを知らせる表示が。もう、 ν速を落とすなんて私ってばイチロー☆ そうだ、早くリビングに行かなきゃ。マミーがご飯を我慢して待ってくれてるわ。
 リビングに降りて、テーブルの上のお料理を見た私はちょっとイラっとしちゃいました。
「っざけんなよババア! またチャーハンかよ! チャーハン死させる気かよ!」
「ごめんねアキちゃん。母さんちょっと時間が無くてこんなものしか作れなくて……。それじゃあ母さんお仕事行ってくるから……」
 マミーはチャーハンを二口三口食べただけでお仕事へ行ってしまいました。さすが私のマミーですぅ。最小限のエネルギーで最大限の仕事!出社は八時だった気がするけれど、きっとこれも最小限のエネルギーで最大限の仕事をこなすマミーのなせる技なのだわ。それよりこのチャーハン薄味ですわね。そうですわ、甘みが足りないですの。スティックシュガーはどこかしら。……あったあった。スティックシュガーを十本持って、袋を全部ちぎり開けてっと。それ! ザザザザー。ナイアガラですわ。砂糖のナイアガラバスターですわ! ザザザザー……。楽しい時間はあっという間に終わってしまうものです。中身をすべて吐き出してすっかり軽くなったスティックシュガーの袋が寂しさを感じさせます。私ったら詩的で素敵。韻も踏んじゃったりして。気をとりなおして、スイートチャーハンに舌つづみを打つとしましょうか。うん。マズイ☆

 ぽんぽんがいっぱいになったことですし、テレビでニュースでも見ましょうか。情強の私はネットからだけでなくテレビからも情報を仕入れるんですのよ。
「…… 昨夜六時頃のテロ事件についての続報が入ってまいりました。事件発生から現場周辺の検査を続けてきた警察庁爆発物処理班からの情報によりますと、現場からは新たな爆発物は発見されていないということです。……申し訳ございません。一部情報に誤りがございました。通常発見されるはずの、犯行に使用されたとされる爆発物の破片が、一切発見されなかったということです。また、犯人からの犯行声明などは届いていないとのことです。」
 プンプン。当たり前ですぅ。ラブリージャスティスは足跡を残さず正義を行使するのですぅ。でもおかしいですわね。首相を何とかしたら日本はよくなるってネットの皆が言ってたのに、株価とかいっぱい下がっちゃいました。偉そうなおじ様が青い顔しながらまたテロが起こったら日本は経済的に破綻するとか言ってるですぅ。プンプン。そんなことはないですぅ! ネットの頭がいい人たちが間違える訳ないのです! それに私はテロリストじゃなくて、愛と正義の使者ラブリージャスティス☆ ですわ! ちょっとこの人達に知らしめるために、天誅でもしちゃおうかしら。私ったらオ・テ・ン・バ☆ さっ、お部屋で着替えてこなくっちゃ。

 そう、どこにでもいるような普通のおんなの子アキちゃんは、konozamaっていうネット通販サイトから届いたこのコスチュームに身を包むことで、愛と正義の使者ラブリージャスティスに変身ができるのですぅ! 原理はわかりませんが、なんと魔法も魔道具も思いのままですぅ! よーし、それじゃあ今回は奇跡の法衣『恋は盲目』と、奇跡のアイスピック『恋文の羽ペン』の装備で行こうっと。ドロン☆ ですぅ。

「……というわけで、本日は世界のテロ事件に詳しい先生にお越しいただいております。先生、今回の事件では犯行声明が未だ出ていないということですが、こういったことは通常あり得ることなのでしょうか」
「はい。今回のようなケースは珍しいと思います。事件発生から19時間が過ぎたわけですが、新たな犯行も犯行声明も無く、犯人の動きが見られないことから、なにか突発的な犯行のような感じがします」
「しかし、まだはっきりとしたことは分かっておりませんが、犯行に用いられたと思われる爆発物ですが、こういったものを日本で手に入れるというのは周到な計画が必要なのではないでしょうか」
「そうですね。まだはっきりとした情報が入ってきておりませんのでなんとも言いがたいですが、9.11のようなテロ事件とはまったく別の性質を持った事件である可能性を……」
「愛と正義の使者! ラブリージャスティスここにあり!」っと、そういえば私の声も聞こえないんですわね。もー、私ったらドジなんだからっ(コツン)それじゃあ、さっそく皆にラブリージャスティスのことを知ってもらうためのミッションを始めるですよ。まず懐から取り出しますは奇跡のアイスピック『恋文の羽ペン』。こちらでおじ様の額を一突き。
「ひゃああああああ」
「きゃああああああ」
「おい、一体どうした!」
「うわああああ」
「今! 今何かに刺された! わああああ! 待て! 行かないで! 待って! 僕から離れないで! うわあああ!」
 あらら、やっぱりこの方おかつらをお召になっていらしたのですね。額から血を飛ばしながら手はしっかり頭を守ってるですぅ。きゃわきゃわ☆ さてさて『恋文の羽ペン』にインクを充填したことですし、ラブリーメッセージを書くですよ。でも犯行声明って何を書いたらいいんでしょうか。とりあえず名乗っておくです。この台本に書けばいいですかね。……愛と……正義の使者……ラブリージャスティス……ここにあり……っと! 完成ですぅ! さすが奇跡のアイスピック『恋文の羽ペン』、かすれること無く書ききったですぅ! さっ、カメラさんにこれを映してもらわなきゃ。って、腰抜かしたおじ様以外はどこか行っちゃったんですね。むぅ、仕方ないなあ。それじゃあこの台本が急に風に吹かれた設定で自然とカメラに映すですぅ。ひらひら~。ひらひら~。映ってますか~。ひらひら~。もう一回カメラにイン~。ひらひら~。これぐらいでしょうか。それじゃ、帰ってν速見るですよ。ドロン☆ ですぅ。

 うーん、まだν速は落ちてるみたいですね。仕方がない、VIP見てみるですぅ。……ん、このスレかしらん。

   【ニュー速VIP】 - おいN○Kに愛と正義の使者が出演してるんだが
   1 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:35:15.46 ID:
        これやばくね
   2 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:35:46.02 ID:
        ラブリージャスティスたんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
   3 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:35:48.51 ID:
        なにこれ祭り?
   4 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:36:51.08 ID:
        どう見てもやらせ


 ここに書きこんでみるですぅ。……次は……どうすれば……いいかなぁ……っと。


   643 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:40:01.08 ID:
     今北産業
   644 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:40:01.32 ID:
     誰かキャプった奴いねえのかよ
   645 名前:ラブリージャスティス[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:40:02.02 ID:
     犯行声明が出てないって言ってたので出してきました
     次はどうすればいいかなぁ?
 

   651 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:40:03.13 ID:
     本人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
   652 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:40:03.32 ID:
     まさかの本人様降臨
   653 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:40:03.35 ID:
     記念パピコ


   668 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:40:45.32 ID:
     >>645
     マジレスすると俺らが疑われるとうざいから秋葉で暴れて捜査を撹乱しろ


 わあ! 668さんがお返事してくれたですぅ!私もお返事書くですよ。


   683 名前:ラブリージャスティス[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:41:49.39 ID:
     668さんありがとうございますぅ
     皆さんに迷惑がかからないように、何人かやっつけてきますね☆


   690 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:42:12.32 ID:
     犯罪予告ktkr
   691 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:42:12.41 ID:
     ラブリージャスティスたんかわゆす通報した
   692 名前:以下、名無しに変わりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/04/〇〇(金)13:42:13.00 ID:
     通報


 さて、次のミッションが決まったです。秋葉で数人ブッ殺ですぅ。ごめんなさいですが愛と正義のための犠牲になってくださいね☆ 今度の装備は、手っ取り早く終わらせるために、この前使わなかった奇跡の聖玉『正義の鉄槌』がいいですわ。うーん、でも正義の鉄槌って感じじゃないですぅ。……そうだ! 奇跡の聖玉『正義の鉄槌』あらため『正義の殉教者』にするです。通称パイナップル爆弾です! そうと決まれば、ドロン☆ ですぅ。

 はい、やってきました秋葉です。平日の昼間なのに大きなお友達がいっぱいですぅ。ふあああ! やっぱり秋葉は聖地ですぅ。こんな場所を爆破してしまうなんて少しもったいない気がします。でも、これも愛と正義のためなのです! でも、ちょっとその前にウインドショッピングしてもいいですよね☆
 わあ、このコスかわいい。着てみたいなあ。あっちのPCパーツもほしいなあ。デュアルディスプレイにしたいのですぅ。でもやっぱり新しいコスチュームを買うのが先かしらん。
「お嬢さん、気合入ってますね。今日は何かイベントあるんですか?」
 ドキッ。店員さんに話しかけられちゃいました! はわわー。でもラブリージャスティスな私は人とおしゃべりできるんです!
「買いませんから! 見てるだけですから!」
 えへへ☆ 上出来ですぅ。でも買う気がないのにうろちょろして迷惑になるといけないから、ちょっと離れるですよ。……あっ、そういえば私、今奇跡の法衣『恋は盲目』をまとっているから人に見られることは無かったです。わー、店員さんは別の方にしゃべりかけてたのに間違ってお返事しちゃったですぅ。はずかち……。早くおうちに帰って布団にくるまりたいですぅ。もー、とっととミッションコンプリるですぅ。さて懐から取り出しますは奇跡の聖玉『正義の殉教者』。こいつを右手に持ちまして大きく振りかぶります。そして、さあ、行ってくるですううう!
「お兄さん、ちょっと待った。何投げようとしてんの。話聞かせてくれる?」

「お兄さん、ちょっとは協力してくれないかなあ。頷くだけでいいからさあ」
 わけがわからない。俺は秋葉で刑事に腕をつかまれ、交番へ連れて行かれ、それからここに連れられた。たぶん警視庁ってところか? でもなんで? 俺は愛と正義の使者だ。日本の未来の為に悪漢に天誅を下したんだ。それに僕はラブリージャスティスだから誰にも気づかれることなく正義を行使できるんだ。それがなんで。なんでなんでなんでなんで
「佐藤正愛(さとうまさあき)、35歳、無職。住所はこれであってるよな? クレジットカードから調べさせてもらった。正愛さんよ、えらいもんを持ってたとはいえまだ未遂だったんだからさあ、今ん所おまえさんを取って食ってやろうなんて思っちゃいないんだ。おじさんたちに少し協力してもらえんかね」
 正愛?わからない。私はラブリージャスティス。どこにでもいるような普通のおんなの子。
「失礼します」
 誰か部屋に入ってきた。どうでもいい。
「警部、身元がはっきりしました。それで容疑者の家族の事なのですが……、こちらを御覧ください……」
「……ちっ、おいおいマジかよ。正愛さんよ、おたくのおふくろさんな、勤め先で倒れたそうだ。それですぐに病院に運ばれたらしいんだが……」
 おふくろ? 倒れた? 何を言っているのかわからない。おふくろとはついさっき一緒に飯を食ったよ。倒れるなんてそんなわけそんなわけ
「14時ごろ、息を引き取ったそうだ……」
 マミーが? おふくろが? 母さんが?
 俺の僕の私の唯一のわからないわからないわからないわからないわからない
 わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない



感想  home