はっ、と私は目を覚ました。「またこの夢・・」最近これの繰り返しで最後は
いつもこの結末。もう一度夢を振り返り、「はぁ」とまたため息を漏らしてしまう。
私、神崎千尋は札幌の小さな会社で事務をしている。会社での評判はいい方で、
先輩や上司は私が仕事はできても独身なことから、よく「○○の田中はいいよ、
あいつも仕事できるし独身だ。神崎さんにぴったりと思うけどなぁ」と、
とよかく言われる。しかし私は度々その話を断ってきたのは私にはどうしても
守るべきものがあるから。守るべきというと堅苦しいかもしれないけれど。
それは私の数少ない彼の存在だと思う。彼の名前は、前田健二。
高校生の時からの男友達で、今は住んでいる場所はお互い遠方になってしまった
けれども、今も私にとってはいい話相手。仕事で嫌なことがあったときには、
真っ先に家に帰りチューハイを飲みながら電話で愚痴を言わせてもらってる。
私は仕事上では見せないが結構強気であるため、お酒が入ると酔いに任せて
話してしまうことも数多くあってしまう。しかし健二は何も言わずただ私の仕事話を
聞いてくれる。これではまるで私が男性で亭主関白みたい、と一通りの話をした後
後悔したりもする。もっとも、健二がどう思っているかは私にはわからない。

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