5月17日。お昼に健二は私の家にやってきた。健二にしては珍しく、
というより休日にも関わらずスーツ姿で。「どうしてスーツなの」
当然の質問である。「いや、大切な話がしたくて」「それにしたって・・」
と言いかけてやめた。これは不毛だと感じたから。「千尋・・黙って聞いてくれ」
「・・・?」首を傾げる。固唾を飲むまでは行かなかったけれども、
緊張感が漂う。「俺は千尋の事が好きだ、大好きだ、一番愛してる。だから言う」
「千尋、俺と結婚してくれないか」そう言うと健二は小さい箱を取り出し、
指輪を私の前に見せた。「えっ?」意外な流れに思わず素が出てしまった。
「結婚ってどういう事・・? 健二には大切にしている彼女がいるんじゃないの?」
「あぁ、あの子は会社の同僚で俺が東京へ仕事に行った日から色々
サポートしてもらってな。それで千尋に何を送ればいいか一緒に相談に
乗ってもらってたんや。明日、千尋誕生日やろ」あ、そういえば私は
5月18日に24歳の誕生日を迎える。昔のように燥いだりはしないけれども
誕生日っていう節目があるのは嬉しい。「それで・・指輪を?」私が聞くと
健二は頷いた。「そして明日に式挙げたいなって思ってる」「へぁ?」
待て待て待て健二さん早いではありませんこと?「そんな・・急に言われても
私どうすればいいのか判らないし・・。」でも健二が別の女性と付き合ってると
思ってたから何だか安心した。そう思うと自然に笑みがこぼれた。暫く考えて言った。
「そうね・・私と結婚するからには今まで以上に頑張ってよね」「精進します」
私と健二はお互いの顔を見て笑った。5月18日、私は24歳になった。と、
同時に私は健二と一緒に同棲生活が始まった。健二は東京の会社を辞め、
札幌の会社へと転職した。私は今の職場に務めている。数日が過ぎ、私達はめでたく
結婚した。これからも私は健二に仕事での愚痴を言うだろうし、健二は
私を陰ながらサポートしていくだろうな。

おしまい



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