それから数週間が過ぎ、5月16日の夜。
二人の事はすっかり忘れ、仕事に今まで以上に向かうようになり、上司から
「神崎さん何かあった?いや、神崎さん仕事出来るから問題ないけど・・」
と言われる始末。上司も困惑気味だ。そんな夜晩御飯を食べ終わり、
テレビを見ていると携帯が鳴った。「こんな時間に誰だろう」時計の針は
10時を指している。画面を見ると見覚えがある名前が。健二だ。
でも今更何の電話なのかわからなかった。もう健二には付き合っている
女性がいて、明日には結婚式を迎えるはずなのに。まさかスピーチ?
明日に出てくれ言われても原稿など用意していない。と暫く考えた。
電話は長く鳴り響いている。悩んだ挙句、電話に出た。「もしもし?」
あくまでも冷静に。そう自分に言い聞かせた。「もしもし千尋?今大丈夫?」
「うん、久しぶり」私が心配していたのを察したのか、
「心配かけたみたいでごめん」健二はそう言った。「本当そうよ・・
電話しても音沙汰ないし、どうしたの」「本当ごめん、色々忙しかったんだ」
「そうなの」とは言ったけれども、私は本当の事を知っていた、
つもりだったが意外な言葉を聞いてしまった。「明日、札幌に行くわ。この前
来てくれたみたいやし、そして大事な話がある」
「大事な話?というよりいきなりね・・」「明日予定あるん?」「休みだけれど・・」
そう言うと健二は納得し「じゃあ明日な」電話は切られた。

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