どうしてこうなってしまったのだろう……。
僕は目の前で泣いている美羽の姿を見て、心の底から自分が嫌になった。
僕はいつものように美羽とじゃれ合っているつもりだった。いつものように。そう、本当にいつものようにだ。
でも、美羽は僕のせいで泣いてしまった。大したことはしていないのに――そんな言い訳は今さら出来ない。
だいたい、大切なものだったら学校に持ってこなければいいんだ。
それに、僕にはあれが美羽にとってどれほど大切なものか分からない。
美羽の筆箱の中に入っていた、青いビー玉が美羽にとってどれほど大切なものかなんて、僕は知るわけがなかった。
それに、僕は前から美羽にたくさん悪戯をされている。
美羽に給食袋を隠されたこともあったし、箸箱を壊されたこともあった。提出する算数のプリントに落書きされたこともあった。あれは酷かった。先生に呼び出されて突然、身に覚えの無いお説教だ。
後日、美羽が笑いながら謝ってきたが、それを聞いた僕は二日ほど、美羽と口をきかなかった。だって、そうだろ? やっていいことと、悪いことがあるじゃないか。
まぁ……よくよく考えると、そんな大層なことでもなかった気もするけど、そのときは僕も必死だったんだ。
じゃあ、今回の美羽のビー玉はそれほど大層なことなのか? 僕は美羽がなぜ、あのビー玉を大切にしているか分からない。本当に泣くほどのことなのだろうか?
また、この前みたいに泣き真似をして僕を困らせようという魂胆じゃないのか? そう思いながら僕は美羽の顔を凝視しようとしたが、そんなことができるわけがなかった。
美羽の泣き顔なんて、見られるわけが無い。
ましてや、僕のせいで泣いているわけだから、尚更だ。
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