Insufficient time

Insufficient time

200mlのビンの牛乳を飲み干す。
松月春香の朝はこの一本から始まる。幼い頃からこの習慣を27年間続けてきた。
たいして牛乳が好きなわけではないが、この一本がないと一日が絞まらないのだ。
シャワーを浴び朝食を軽く摂る。そして仕事に行くというルーティンワーク。
人付き合いもよく気さくな性格の春香。
彼女がレズであるということ以外は普通の人間であった。
男とセックスをしたことはある。快感も人並みに感じる。
しかし快感のために男を求めることはなかった。
自分がレズであるということを他人に話したことは
ほとんどなかった。レズであるということを恥ずかしいことと
思ったことはない。周りからの態度が変わったとしても
何も気にはしない。しかし夏目友紀にだけは違った。
有紀とは高校からの友達で今でも月に2、3度はお茶をしたりする。
親友と言える有紀のことを好きになってしまったのだ。
有紀から避けられたりすることには耐えられない。
誰かに自分がレズだと言ったら有紀の耳に届くことも考えられる。
有紀が自分がレズだと知って避けられるのを防ぐため。
そのためだけに今までほとんど言わないようにしてきた。
有紀とキスをしたい、セックスをしたい、自分だけのものにしたい。
その感情よりも友達としての今の関係が崩れることのほうが怖かった。


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