ボクと、キミと、マジキチ狂和国あらでゅ~
俺が撃った散弾銃の弾は、ジハードに転倒したイスラム原理主義者の脳天をぶち抜く。
肉片は飛び散り、横たわったその死体は原型を留めておらず、周囲の血生臭い風景と同化している。
その、なんだ、悪いな、ここは戦場だ。生きるか死ぬかの世界なんだ、一人の命の重みなんて構ってられないんだよ。躊躇った奴は死ぬ。一瞬一発で勝負は決まる。
高揚した精神、言葉は止まらない。俺の口から思考に流れる最重要な命題が空気振動となりアウトプットされる。
「この世にはな・・・二種類の人間がいる。童貞と・・・非童貞だ。その二つだけなんだ、間なんて存在しない。お前らは甘く見ている、童貞を卒業するためにはな、
ただ挿入するだけじゃダメなんだ。」
俺は全力疾走しつつ、角を曲がり切ったところで敵兵と出くわす。俺のほうが相手より早く認知したはずだ。しかし俺が持っている武器だと、一発目を外せば距離的に、奴の持っているUziと比べて分が悪い。刹那の時間の間にこの状況分析がなされ、俺は銃を定め、撃つ。
クソ!肩を掠めただけで、致命傷にはいたらなかった。俺はテロリストが撃ったUziの弾を五発ほどモロにくらう。
なんとか身を隠し、威嚇射撃をし、留めを刺されずに済んだが、致命傷である。
グホ・・・!どうやら俺は出血多量で死んじまうようだ。メディックも間に合わない。
そのまま横たわり、だんだん目が眩んでいく・・・
走馬灯が脳裏をよぎる。2歳の頃、アリの巣を水で埋めて全滅させた時の記憶が意識を通り過ぎる。
その情景を思い出すと俺はどうやら満面の笑みを浮かべているようだ。どれだけ悪なんだよ。
そして5歳半のあの日、俺は家の裏庭にいたダンゴムシの集団を目につけ、一匹残らず、上下半身を切断するという大量虐殺行為に至る。
あれ?なんでそんな酷いことできちゃうの?生物全般に対する嫌悪感もなかった、ファシズムにも共鳴していなかったぞ、あの頃は。
そして次は、10歳3ヶ月の時点でクラスの同級生の女の子に告白したときの情景が思い浮かぶ。
「前からサユリちゃんの事が好きでした、付き合ってください。」
そう、真面目に、律儀に、真摯に思いを伝えれば必然的にいい結果、正しい結果が来ると俺はまだあの頃信じていた。だって、そうだろ?世の中は自分の善(と思えるべき)の行為に対して、
ちゃんとした見返りを与えてくれるんだろう?そのはずなんだろ?
そして、サユリちゃんはこんなことを言った
「ごめん・・・嬉しいけどキョウノスケ君は友達としか見ることができないわ・・・他に好きな人がいるし・・・」
俺は失意を呑み込み、なんとか言葉を紡ぎ出したんだ、たしか
「うん・・・わかった、それならしょうがないね、これからもよろしくね」
ちなみにサユリちゃんは3週間後にクラスのスポーツ万能サッカー少年のタカシ君と付き合い始めた。中二の時に出来ちゃったらしい。その後は定かではない。
そこで知ったんだ俺は、格差というものを。人は平等に作られていないということを。勇気を振り絞って、頑張っても、報われないときがある、いや、むしろその場合の方が多いということを。
自分より人から好かれる能力を持ち合わせた奴は、山ほどいる。
例えその人が自分の世界の中心にいたとしても、その人にとっては最初から眼中にないなんてことだってざらにある。
ああ・・・マジキチ狂和国あらでゅ~・・・
そこで俺は死に絶える。
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