夏どろぼう




「それで、透くんは結局、どこに行きたいか決めたの?」

目の前で女教師はそう言った。

「・・・まだ、ちょっと」

僕が"決めた"精一杯の答えがこれ。

「・・・透くん。いま、どういう時だかわかっているの?
 もう2年生の1学期が終わるっていうのに、志望校のひとつくらい、考えておかないと。」

「はい。すみません」







2者面談はどうも苦手だ。期末テストが終わって、みんなどこの大学にいくか考え始めてる。
別段テストの成績が悪いというわけではなかった。飛び抜けて良いと言うわけでもないけれど、
一般高校生の、一般常識くらいならわきまえているつもり。
なのにどうして、あんな言われようされるんだ。親でもないのに。
だいたい、「もう」じゃなくて「まだ」2年じゃないか。
ため息と一緒に昇降口を出る。
低い空と高い湿度。7月13日。金曜日。



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