3.
3-1
太陽の強い日差しが肌をジリジリと焼き、セミは愛を求めて鳴いている。
そう、時期は夏である。
朝とはいえ、今の時間からすでに暑い。
そして私は今、大学の駐車場にいる。
何故ならここが旅行の集合場所だからである。
研究室で行く、一泊二日の旅行。
ちなみにこれは、就職祝いと大学院合格祝いを兼ねて行われている。
私が昔、企画したイベントである。
それが今も受け継がれ、毎年、院1回生の生徒が企画して、いろんな所へ行っているのである。
生徒も私も毎年楽しみにしている。
ただし例外的に、関先生は不参加ということである。
『私には仕事がありますので』
これがその理由である。
無愛想な感は否めないが、彼がこっそり私の仕事を処理してくれている事を私は知っている。
彼はそういう男なのである。
太陽の下に出るのが嫌だというのも理由もあるが。
おかげで彼の肌は1年中真っ白である。
白衣を着れば体全体が白でどれが顔だか分からなくなる。
そんなことはない。

昨日からこの旅行が楽しみ過ぎて、この集合場所に1番乗りした訳だが、生徒達も集まり始め―もちろん、楓くんも含まれる―集合の準備が整ったようである。
まず、3台ある車の内どの車に乗るかくじ引きで決める。
このくじ引きは帰りの分も兼ねている。
出来れば楓くんと同じ車が望ましい。
まぁ、出来れば、である。

くじ引きの箱の中に手を入れる。
手に紙の感触を感じる。
どこだ…どこなんだ…。
と、ある紙に手が触れた瞬間、電流が走ったような感覚を味わった。
こ、これだ!!
紙を勢い良く引き抜き、その手を天高く突き上げる。
そして、紙を見た。



きたああああああああああ!
楓くんの方を見てみると。
こっちを見て、笑顔で軽く会釈をした。
暑さのせいもあってか昇天しそうであった。

とりあえず、私は後ろの座席に座る事にした。
そして生徒達の話を聞く、それが例年の形である。
すると、すぐに私の隣に楓くんが乗り込んできた。
無理に呼んだ訳でもないのに隣に来てくれたのが、少し嬉しかった。

そして車は動き出す。
旅行の始まりである。



home  prev  next