沈黙は、お互いの分かれ道まで続いた。
 どうしてか、手塚はあの後、何も答えなかった。僕も何も言うことができなかった。
 黙って別れることになるのかと思ったら、目の前にふたつのビー玉を見つけた。それは、歩道と車道の間にふたつ揃って転がっていて、なんだかとても綺麗に見えた。透き通った青い色のビー玉と、青い色のビー玉に比べると少し透明度が低く感じる赤い色のビー玉だった。
 それを見て僕は
「ビー玉だ……」
 と、独りで呟いた。
 横に並んで歩いていた手塚も、ビー玉に気がついたのか「あっ」と、声を漏らした。
 手塚にはどう見えたか分からないが、僕の目には、一瞬だけビー玉が太陽の光に反射してピカりと輝いたように見えた。
「綺麗だな」
 と、手塚がボソっと言った。
「あぁ」
 と、僕もボソっと答えた。
 気づけば手塚は青いビー玉を、僕は赤いビー玉を拾っていた。
「このビー玉さぁ」
 手塚が何かを思いついたように咄嗟に切り出した。
「二人の友情の証にしねぇ?」
 気障な手塚らしい言葉に僕は笑った。
 手塚もなぜか笑っていた。
 自分のあまりにも臭い台詞にさすがの手塚も気がついたのかもしれない。
 いや、さっきまでの湿気た空気をどこかに吹き飛ばしたくて、無理やりに僕らは笑ったのかもしれない。
 その笑い声は次第に大きくなった。手塚も僕も腹を抱えてバカみたいに笑った。本当にバカみたいだったけど、それは本当に楽しかった。


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