僕らはそのあと青いビー玉を必死に探した。
 でも、どうしても見つからなかった。
 そして、ある結論に達した
「新しいビー玉を買おう」

 そもそも、どうして手塚が美羽に青いビー玉をあげたのか、僕には分からなかった。そのビー玉は確かに、あの日、友情を誓い合ったビー玉はずだ。
 僕は手塚が一瞬、僕のことを嫌いになってしまったのかと思って焦った。
 でも、そのことは帰り道で美羽が教えてくれた。とても、寂しそうな顔で教えてくれた。
「手塚くん。二学期いっぱいで転校するんだって……。お父さんのお仕事の事情で……」
 僕は驚いた。いや、驚いたなんてものじゃない。一分くらい固まってしまった。僕が固まっている間も美羽は話を続けた
「本当はね……転校のことは、あんたには教えないで欲しいって言われてたんだ。でも、当日まで転校するって分かってなかったら、やっぱ嫌でしょ? 突然、転校なんて有り得ないもん……」
 今は、十一月の終わりだから、手塚と学校で過ごせる時間はどれほどなんだろう……。
「あ、それで、あのビー玉を私にくれたの……。なんか、このビー玉は美羽が持ってたほうがいいから、とかよく分からないこと言ってた。でも、大切なものだから絶対失くすなよ。とか言って……わけ分かんないよね?」
 あれは、僕と手塚の友情の証だろ? それを美羽にあげるってどういうことだよ……。友情なんてどうでもいいのかよ?
「わけ分かんねぇな……手塚の奴」
 僕は、そんなことをようやく答えることができた。
 でも、突然「ハッ」とした。
 あのビー玉を美羽にあげたってことは、手塚は僕と美羽を繋げようとしたのか?
 なんとなく分かった。手塚の考えていたことが。気障な手塚しかできない最悪の冗談だと思った。笑えない、本当に笑えない。手塚らしい、本当に全てがあいつらしい……。
 そして、僕は叫んだ。
「よし! ビー玉買いに行こうぜ! 三つ!!」
 横にいた美羽がビクッと跳ねた。かなり驚いたみたいだ。

 そして、次の日、僕らは新たに友情を誓った。小さな3つのビー玉で。
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