健二とは大学のサークルで出会った。
二人は大学の吹奏楽サークルで健二は一学年先輩だった。
吹奏楽サークルと言っても活動はほとんど飲み会をするだけの名ばかりの
サークルだった。有紀は中学高校と吹奏楽部に入っていた。
楽器はオーボエ、この楽器を選んだ理由に深い理由はなく
ただ有紀の中学にオーボエ奏者が少なかったので
先輩からやってみないかと言われ選んだのだ。
高校の時、野球部の応援のために炎天下の中で演奏するのが
春香は嫌いだった。運動は得意なほうではないし
野球のルールも知らない。ましてや野球部に友達もいない自分が
汗を流しながら応援しなくてはいけないことが不満であった。
吹奏楽サークルでしっかり練習するのは週に一度程度であった。
この気楽さが有紀は好きだった。演奏会などがない趣味としてやるだけ。
男女15人程度の緩いサークルの空気に自宅にいるような心地良さまで覚えた。
その中で有紀には彼氏ができた。学年は一つ上の新見健二。
サークル内ではリーダーというわけでもなく頼られるキャラでもなし。
いたって普通な感じの健二と付き合うことになったのだ。
付き合うきっかけになったのは有紀と春香が大学に入学して初めての
サークルでの旅行だった。健二は有紀がサークルに入ってすぐ有紀に一目惚れ
していたらしく、深夜に二人で買い出しに行っているときに打ち明けられた。
有紀は健二が持っている優しさが好きだった。
近くにいて安心できるような男の人は有紀にとって初めてだった。
健二を好きだとは思っていなかった。しかし健二に告白されたとき
この人となら付き合いたい。そう思えたのだ。
春香に一番に付き合い始めたこと伝えた。
高校の頃から一番の仲良しの春香にはなんでも話すようにしていた。
悩み事があれば自分の事のように悩んでくれる。
嬉しいことがあったら自分のことのように喜んでくれる。
そんな春香のことを有紀は大好きだった。
健二と付き合い始めたことを春香に言うと
「やったじゃん!お似合いだと思うよ!」
と笑顔で祝福してくれた。そんな春香を見て有紀はさらに嬉しくなった。
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