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ではなく、その刹那、予期せぬ事態が起きた。手榴弾が、本来は放物線を描いて落下するはずの軌道が、ドアの枠の部分に当たって跳ね返ってきた。コロンコロンと。前から注意されていたことを本番でやってのけるとは、無能この上ない。
オメガ隊長:「ア・・・バ、オマ!」
ん?オバマ?
ドーン
「バカ野郎おおおおおおお!」
マイク越しで罵倒の声は強く鋭く、俺の鼓膜を刺激する、結果論的にそれは断末魔となる。
世界は光と不協和音に包まれた。同時に視覚と聴覚を失った俺達は、旧ソ連軍から支援を受けている設定のフル武装テロリスト集団の野郎どもに太刀打ちできるはずがない。
かすかに銃声のような音が聞こえる。味方も、ヤケクソに闇雲、略して「ヤケヤミ」に自動小銃やライフルを打ちまくっているようだ。ハタから見たらさぞや滑稽な様に見えるだろう。
っと、考える間もなく容赦なく俺たちは害虫のように一掃された、ジハードの前ではインフィデルな俺らには人権すらないのかよ。いや、こちらから奇襲をかけたんだからそれはそうだよな。当然の仕打ちだ。
Team, fall back!
撤退しろ!
「ダンダンダンダンダン」
「ギャアアアアグヘッグヘッツァアアアアアアアア」
Boom!Head shot!
YEEEAAAHHHH! Allahu Akbarrrrr!!!! 勝利の希望を失った俺は戦意を喪失し、かつては一緒に過ごした仲間たちの亡骸が浮かぶ血の海の上で蹲る。二発ほど腹部の防弾チョッキにくらっちまったようだ、もうHPは残り少ない。
そして俺には理解できないアラビア語の罵倒とともに、カラニシコフの弾が俺の頭に命中。これがリアルなら、多分、捕虜で生き残ったやつらは、後でカメラの前でノコギリでギコギコとかやられるんだろうな。
最終ラウンドは終わった、一勝の差で俺たちは負けた、ゲームオーバー。
ラグがあるせいか、悲劇の余韻が遅れて細波のようにやってくる。
ustraemer-932102:wwwwm9m9m9m9(^Д^)
ustraemer-319392:おいバカ
ustraemer-918202: トークで誤魔化すなカス
ustraemer-039218:最後の最後で期待を裏切らないとは、さすがやで・・・
epsilon-leader:氏ね
ustraemer-039212:言い訳すんな、ダンゴー焼き土下座ハヨウ
ustraemer-019328:今日も虫焼きクルー?
エプシロンリーダー、さっきも配信を見ていたのか。彼もこの配信の常連のコテハンだ。
なぜかやっているゲーム関係無しに、彼は自分がエプシロン隊の隊長であると主張する。むしろ異常なまでに固執している、なにより不可解な奴だ。
チャ民というのは成功よりも失敗に対しての反応と反発が強い。俺はこのようにゲームに集中せずにチャ民の反感を買う、それはいつものことだ。どうやら彼らはゲームの方に夢中になっていて、俺の演説(魂の雄叫び)に聞く耳を持っていないようだ。
ustraemer-4829:さぁ、次のゲームこそ勝つんだ
もう一ゲームしたい所だが、今日に限ってはもう限界だ、3時間も集中力をフルに使うゲームをしていたらさすがに疲れる。俺はチャットの声を無視する、もう深夜12時だ。普段なら配信を終える時間帯だ。明日に学校があるなら早々に配信を終わらせねば、朝に起きれない。
だが、今夜は配信を続ける、今夜は特別だ。
なぜなら、俺は明日の朝に死ぬらしいからな。
俺は今日、死神にそう宣告された。それが本当なら配信をするのも今夜で最後になるだろう。
話を少し戻そう。
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