ポーン、ポーン。ポーン。
涼しい環境に、思わず眠気を誘われていた。
図書館では、放課後は冷房がつけられた。
夏休み前、最後の日も同様だった。
開けたままになっていた本を、しおりも挟まず棚に返す。
ドアを開けると、サナエは何人かの女生徒と喋っていた。
僕は一度だけ目を合わせて、玄関へ下りていく。
約束をしているわけではない。ただ、たまたま居合わせるから。それだけだ。
靴を履き替え、自転車を出す。
サナエは来ない。
校門を過ぎても、住宅街に入っても。
気づいたらそこは自分の家の前で、珍しく歩いて帰ってきてしまっていた。
自転車を置き玄関を開けると、どっと汗が吹き出す。荷物と服を放り出して、全てをシャワーで洗い流した。
夏休みになると、サナエとは会わなくなった。
もともと会う約束をしていた訳でもない。
久しぶりにタイチにメールすると、夏休みいっぱいは群馬の山奥で合宿中だと言う。
ヨースケは夏期講習が忙しいと言っていたが、一度だけ遊ぶ時間が取れた。
僕はそれなりに宿題を終わらせて、後の休みをだらだら過ごした。
ただただ、怠惰に、時間を消費した。
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