それからはあっという間だった。
 葬儀も行われた。学校ではちょっとしたニュースになった。
 サナエと同じクラスの女子たちはこぞって泣き、全校集会で黙とうが捧げられた。
 サナエは身体が弱かったことを、小学校の頃から隠していた。
 いつも気丈に振る舞って、何でもこなしていたから、持病なんて気付く人もいなかった。
 だからこそ、誰も予想しない出来事だったに違いない。

 葬儀場で、僕とタイチとヨースケとアヤとキヨは、久しぶりに顔を揃えた。
 みんな大泣きしていた。
 泣かなかったのは、僕だけだった。

 もう、泣かないよ。サナエ。
 最後に笑顔見せられなかったからさ。
 これからお前のこと思い出すときは、ずっと笑顔でいるよ。
 これがお前への手向けになるように。



 青い空、白い雲。
 冬も去り、ようやく屋上に上がれる暖かさになった。
 屋上で寝転がるのも久しぶりだ。
 高い空に手をかざし、少し透けた手をじっと見ていた。
 にゃー。
 透き通る高い鳴き声。
 頭だけ動かして見ると、三毛猫が丸まっていた。
 にゃー。
 もう一声。
 手を下ろして目を閉じる。
 予鈴が鳴るまでは時間がまだあるだろう。
 もう僕を起こしに来る声は聞けないけれど。サナエの遺してくれたものがここにあるから。
 僕たちの時間は、消えたりはしないんだ。


 一人で歩く通学路。
 今日も夕焼けに染まる。
 自転車を押しながら。
 ゆっくり、ゆっくり。
 でも、着実に。
 夕焼けに向かって歩き続ける。
 少しずつ沈む太陽に目を細めて、足を止めた。
 暖かいヒカリに、勇気づけられて。
 止まった時間を想い出に抱えて。
 新たな時間は、また廻りだす。
 少年は、止めた足をまたゆっくり踏み出した。
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